マグネシウム・エネルギー社会
40年以上も前に、化石燃料の枯渇が心配され、水素を燃料とする社会に移行すべきことが話題になっていた。確かに水素は、燃焼過程で二酸化炭素を発生しない。現在言われている「きれいな燃料」の最たるものである。
ところが、爆発しやすい気体であるため、取り扱いが難しい。そのためか、いまだに「水素燃料社会」は実現していない。水素を副産物として発生する企業も、それを上手く利用できずに捨てているのが、現状である。
水素の利用については、燃料電池の燃料としての利用が有望視されているが、たとえば、燃料電池車について、コストの問題もさることながら、燃料である大量の水素をどうやって運ぶのかということが、大問題になっている。
現在のところ700気圧の高圧で圧縮して運ぶのだが、爆発しやすい気体なので、頑丈なボンベに詰めている。このボンベが、とてつもなく重いのだ。
そこで金属マグネシウムが登場する。金属マグネシウムは、水素と違い、摂氏六百五十度以下では発火しないし、真空パックに入れて置けば長期保存も可能だ。火をつければ燃える。「金属マグネシウムは石炭と同じ固形燃料と考えていい」と言うことになる。またこれに水を掛ければ、水素を発生するから、大量の水素を安全に運ぶ手段としても使える。
そこで、夢のような「マグネシウム燃料社会」構想が生まれる。太陽光は、無尽蔵に得られる環境燃料である。また海水には、ほぼ無尽蔵の酸化マグネシウムが含まれている。これらを使って、石油や石炭や天然ガス等の化石燃料を全く消耗しない、持続型環境燃料社会を実現することが可能だ、と主張する人物が出現してくることになる。
東京工業大の矢部孝教授がその人である。ただ残念なことに、小生の見るところ、教授の構想に不可欠の太陽光励起レーザーがどうやら性能不足で、全体の仕組みが動かないというのが事実のようだ。まあこんな話もあると言うことを知っているだけで、損にはならないし、この話で騙されることも無くなると言うものである。
本当の話かどうか定かではないが、教授の元には、冒険企業から自動車会社、さらには石油企業まで世界中から問い合わせや見学が殺到しているのだという。これも本当かどうか怪しいのだが、実証実験も順調に進んでいて、ひょっとすると、実現してしまうかもしれないといわれている、その驚くべき「マグネシウム燃料社会」を紹介したい。
ソース:東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2009051202000131.html
【クリーンで無尽蔵】
高温の金属マグネシウムに水をかけると水素が発生する。水素は、水素エンジンや燃料電池の燃料になる。この水素は燃えると水になる。二酸化炭素を出さないクリーン燃料だ。
矢部教授は「海水には千八百兆トンもの金属マグネシウムがある。これを燃料として使うとすれば石油換算では三十万年分にもなる」と言う。しかも使用済みの酸化マグネシウムを、太陽光を使って金属マグネシウムに再生すれば、太陽がある限り、もう永遠に燃料には困らなくなるという。
矢部教授が提唱するマグネシウム・エネルギー社会では、無尽蔵の環境資源である太陽光、水、酸化マグネシウムを使う。こんなイメージだ。http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/images/PK2009051202100033_size0.jpg 
海岸に建設された淡水化・マグネシウム精錬プラント。屋根には太陽に向かって大型プラスチックレンズが並び、精錬に必要な高温を作り出している。ここで海水から農業用水を生産する一方、海水に含まれる大量の酸化マグネシウム「にがり」から金属マグネシウムを取り出す。
生産された金属マグネシウムはトラックや船で、各地の発電所や家庭、コンビニなどに運ばれる。発電所では、金属マグネシウムから得られた水素を石炭代わりに燃やす。家庭に運ばれた金属マグネシウムは家庭用燃料電池の燃料となる。燃料電池の排熱は、風呂や暖房に使われる。
コンビニでは、金属マグネシウムが、真空パックにされ売られている。これは燃料電池車やパソコン、携帯電話などのバッテリーに、燃料である水素を供給するための物だ。
金属マグネシウムは使い捨てではない。水を加えて水素を発生させた後には、酸化マグネシウムが残るが、これは、回収され再生所に集められ、「太陽光励起レーザー」で再び金属マグネシウムに再生される。
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【太陽光レーザー】
現在、金属マグネシウムの精錬は、鉄とケイ素の合金を触媒に使い、大量の熱を加えて行われている。金属マグネシウムを一トン製造するのに石炭十トンを使う。この金属マグネシウムを使ったのでは「マグネシウム・エネルギー社会」など成立しない。
矢部教授が提案するのは、大型レンズで集めた太陽光を、イットリウム、アルミ、ネオジム、クロムのセラミックによって赤外線レーザーに変換し、これをレンズで集光して約二万度という高温状態を作り、この高温で酸化マグネシウムを精錬しようというのだ。
このため矢部教授は二年前、北海道千歳市に太陽光励起レーザーの実験施設を作った。このレーザ光を二メートル四方の透明プラスチックレンズで集光すると、その焦点の温度は約二万度に達したのだという。
この成果に自信を得た矢部教授は、実際に酸化マグネシウムの精錬を行うため、今年、沖縄県・宮古島に大型施設を建設するのだという。
【実験で裏付け】
マグネシウム・エネルギー社会がもし実現したら、火力発電所も原子力発電所も核融合炉も不要に成る。ガソリンスタンドも石油タンカーも不要だ。矢部教授にその実現性を聞くと「百パーセントこれは実現する。すべての過程が実験で実証されているからだ」と、自信満々の言葉が返ってきた。

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